眼鏡業界のトレンドは長らく「クラシック」が主流となっており、「ウェリントン型」や「ボストン型」といったデザインの流行がありました。そして、近年では「プラスチックフレーム」から「メタルフレーム」へとトレンドが移り変わり、注目されているのが「ラウンド型」丸眼鏡です。ラウンド型は眼鏡の新調を考える際に一度は挑戦してみたいと思うカタチですが、難易度が高いデザインでもあります。
数多くのブランドから様々なラウンド型のモデルが発表されていますが、私が強くオススメしたいのが金子眼鏡のブランド「井戸多美男作(いどたみおさく)」の丸眼鏡です。私も愛用している眼鏡で、他のブランドに比べてフィット感が段違いに良いのが特徴です。
今回は金子眼鏡のハウスブランド「井戸多美男作」について解説していきたいと思います。
井戸多美男作とは?
眼鏡メーカー「金子眼鏡」が福井県鯖江市の伝統製法を後世に継承していくために発足した職人シリーズ。「井戸多美男」はその中の一人です。
ブランド発足当時は同じ職人シリーズでもセルロイド製の眼鏡職人である「泰八郎謹製」や「小竹長兵衛作」に注目が集まっていたため、あまり人気がなかったそうです。しかし、近年ラウンド型が流行のデザインとなったことから、今では常に品薄状態となる人気の職人となっています。
井戸多美男はこれまでに数多くのモデルを発表していますが、最大の特徴は「サンプラチナ製」の眼鏡です。古の素材とされるサンプラチナは非常に硬く、加工が難しいため、最近では使用するブランドはほとんどありません。
サンプラチナは元々医療器具でも使用されていたことから身体との親和性、耐食性にも優れている素材です。また、メッキなどの表面処理をしなくてもほとんど変色しないという特徴があります。
ディティール解説
井戸多美男の眼鏡はまさに「引き算の美学」。無駄をすべて削ぎ落した洗練されたまデザインが特徴です。そして、このシンプルなデザインの中には「左右非対称丁番」や「しのみ返し」、「スパルタ丁番」というユーザーにはうれしいギミックで設計されています。
■左右非対称丁番
フロントとテンプルを繋ぐパーツ「丁番」。通常どちらも上にネジ山が付いていますが、井戸多美男の商品は右丁番ネジは「下」、左丁番ネジは「上」に付いています。これは眼鏡を開閉する際にネジが緩みを抑える効果があります。両方上にネジ山が付いている場合は、右丁番ネジだけ緩みやすい設計となっているのです。
■しのみ返し
テンプルの先端部分がまるで「耳かき」のようにくるっと丸まっています。これは眼鏡を掛けた際に、先端部分のストレスを逃がす効果があります。長時間かけていて耳の後ろがズキズキするようなことが起きにくい設計ですね。
■スパルタ式丁番
良質な眼鏡によく見られる設計です。丁番パーツが「ロー付け」されていないため、非常に強度があります。フレームが変形しづらいため掛け心地が持続し、万が一踏んでしまった場合でも 破損を防げるほどの耐久性があります。
名作「T416」と「T461」の違い
井戸多美男作の中で最も人気が高いモデルが「T416」と「T461」です。品番もどこか似ている両モデル。どちらも一山(いちやま)仕様で、カラー展開も同じです。唯一違う点は「レンズ径」です。
出典元:金子眼鏡T-416 | Flickr
出典元:金子眼鏡T-461 | Flickr
一見同じフレームデザインに見えますが、横幅に4mmの違いがあり印象に大きな変化があります。カッチリした印象の「T416」、程よく柔らかな印象の「T461」といったところでしょうか。
人気モデルであるのに手造りであるため生産が追い付かず、両モデルが同時に店頭に並ぶことはあまりないそうです。同時に掛け比べて出来ちゃう人はとてもラッキーなのかもしれません。私はスタッフさんにお願いして取り寄せてもらいました。
また、心配される方が多いのが「一山タイプ」は眼鏡が下がってこないのか?という点でよね。私は井戸多美男の眼鏡に出会うまでLunor(ルノア)やayame(アヤメ)など様々なブランドの一山タイプの眼鏡を試着しましたが、井戸多美男の眼鏡の掛け心地が圧倒的に良いと感じました。全く動きません。
聞くところによると、何十年と同じ眼鏡を作り続けているため掛け心地の良くなる感覚を手が覚えているのだそう。同じ図面で別の誰かが造っても井戸多美男の掛け心地にはならないということなのです。このようなストーリーを聞くとより愛着が湧いてきそうです。
「ラウンド型」の眼鏡の新調を考えている方に心からオススメできるモデルとなっています。眼鏡選びの参考になればうれしいです♪